Dark Ages - "Twilight Of Europe"

・Artist Information
Country : Ukraine
Creation : 2004
Genre : Blackened Ambient
Label : Primitive Reaction

・Album Information
Year : 2005
Release-Type : Full-Length (1st)

Tracks are

  1. Breath Of The Black Plague (04:58)
  2. Birth Of The Antichrist (04:26)
  3. Dungeons (03:01)
  4. Art Of The Dark Ages (03:09)
  5. Gothic Architecture (04:34)
  6. Malleus Maleficurum (05:02)
  7. Fate Of The Templars (03:50)
  8. Rise And Fall Of Empires (05:12)
  9. Fomulas Written In Blood (2:36)
  10. Walpurgis Nacht (02:27)
  11. Ignorance (03:59)

Total Time (43:14)

・My Comments I
ウクライナのいわゆるダークアンビエントプロジェクトの1stですね。
ウクライナと言えば、…まぁ、Nokturnal MortumなどのNS(National Socialistic)勢が際立ちますね。
もう1つNSブラックを挙げるとするならば、Hate Forestでしょうか。

このプロジェクトはそのHate ForestのブレインであるRoman Saenko氏による1人アンビエントです。俺のロマン、冴えんコオォォw

Roman氏は他にもDrudkhのメロディメイカー兼ギタリストであったり、Blood Of Kinguのブレインであったり(新譜はよ)、レーベルのオーナーであったりと、
何でもかんでも手出してウハウハしたい無類のミュージシャンです。兼任しすぎていつか倒れそうだけれどね(笑 あとこの人安定のハゲ

この人の素晴らしい所は、やはり無尽蔵とも言えるメロディの引き出しの多さといえるでしょう。

しかし

再三言いますが、私は思想たるものを重んじるヤツですので(なにコイツキモ)、それは後回し。まず思想の面から紐解いていきましょう。



思想厨Fuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!!!!!!!

・Ideology's Detail I
―先述の通り、Roman氏が在籍していた(今は既に解散済)Hate ForestはNSブラックメタルといわれます。
NSは国家社会主義のことで、実際国によって様相は異なるのですが、ブラックメタルで用いられている場合は大抵ドイツのナチズム/ファシズムと捉えて結構です。
NSブラックは少々面白い区分ではあるんですが、今回は割愛ということで。ヘィルヒットラァ!エァァァ!

しかし。Roman氏はDrudkhというバンドにも参加、中枢を担っているわけなのですが、議論の余地こそありますが、Drudkhは別にNSブラックではないです。
Drudkhは一切の政党や体制をも支持せず、ある種のカントリー・ノスタルジアに重点を置いています。
古き良きウクライナの伝統や歴史に目を向けていることが特徴で、リリックもシェフチェンコさんを始めとする詩人の作品の引用であることもしばしば。
その為、タイトル然りリリック然り、大抵はキリル文字で描かれています。キリル文字で。よめねーよう○こ。

Blood Of Kinguに関しては様々な地域、様々な時代の伝承や神話(というと少々広範囲になりますが)を扱っています。上記2つとはこれもまた、違いますね。

そしてこのプロジェクトのDark Agesは、上記3つともまた違う観念形態を形成しています。中世ヨーロッパへの言及です。
Dark Agesという名も示しているように、中世ヨーロッパの中でも暗黒時代と呼ばれる時代の事柄を題材としております。

一曲目のような"Black Death"(黒死病)だったりが典型的な例なわけですが、作品内で多く取り上げられているのは"Witchcraft"(魔女術)についてです。

六曲目のタイトル、"Malleus Maleficurum"というのは、まんま中世の異端審問官によって書かれた本の名前です(邦題は『魔女に与える鉄槌』)。
てかこれと同名のブラックメタルバンドもいましたね。ひねれよ


この本の1669年版の表紙(神ことWikipediaで確認可能)は、作品の見開きにも描き出されていて、他にも魔女術関連の文献が所狭しとプリントされています。
まー中世ヨーロッパといえば魔女術ですよね。一応私も関連文献然りは読んでいるのでちょっと話せるくらいには知識は有していますが、



ねぇひけらかして良い?ねぇひけらかして良い?ねぇ?ね(以下異端審問

・Ideology's Detail II
―さて。今までのは前フリです。そういうのはこの便利なネット社会、ググればすぐに吸収できる知識です。思想厨が取り上げたいのはここからです。

上記4つのRoman氏が携わるプロジェクトを挙げたわけですが、もうお分かりの事かと思います。



Roman氏思想ちょこちょこ変え過ぎだろ



というところですね。ここが面白い所。Blood Of KinguやDark Agesは一億歩くらい譲ってそういう見方にもシフトできる、と捉える事も出来なくはないですが、
NSブラックを掲げるHate Forestと一切の政治的思想を支持しないとするDrudkhなんかは、真正面からぶつかるレベルのパラドックスと言えます。


そしてもう一つ疑問が生じてきます。
果たしてRoman氏はそれぞれに確固たる意志をのせているのか、という点です。ここは私にとっては非常に重要でして。



―思想至上主義の抱えるパラドックスの1つは、「思想を理解しようと意気込むのは良いが、理解が頭打ちになってしまう可能性が高い」という点です。

我々は基本1つの言語しか使いこなせません。もっとも、今やグローバル化が進んでいると称し、英語も扱える人が多くなったように思いますが。
そんな状態で、他の言語を紐解くと言うだけでもしんどいというのに、ましてや思想を読み解こうとするわけです。

そしてもう1つの問題は、ブラックメタルアーティストサイドの思想が形骸化しているという点。これも避けては通れません。
90'sスカンジナヴィア勢がブラックメタルとは、を指し示してくれたのは良いんですが、その多くのフォロワーは殆ど思想を伴っていない場合が多いです。
専らサウンドのフォローウィング。私は「保守派」と呼称していますが、クラシカルであると言った方がいいでしょうか。


この2点から言えることは、イデオロギーが形骸化しているかどうかが重要だが、まず読み取れないことが多い」ということ。
例を挙げれば、如何にアーティスト側が古代スカンジナヴィア文字でリリックを表現していたとしても、内容はイデオロギーなど皆無の言葉の羅列だった、とか。


この作品でも既述ですが、作品の見開きに中世の書物とかの文献がプリントされているのですが、それは誰にだってできる事であって、
それを通じてRoman氏が何を伝えようとしているのか、また、その濃淡は、とかとか、本来最も重要とも言える場所が非常に難解であるんですね。

無論私にもそこらは全く分かりません(笑 分かったら苦労しない、と言いますかね。色々と考える余地はあえて残して、サウンドのお話です。
狂ってる? それ、褒め言葉ね。

・My Comments II
―さて、気持ち悪いお話は置いといて、サウンド面について。
別に私は音楽学の素養もあるわけでもなく、大したことは言えませんが。

この作品はアンビエントなので、ちょっとチャントがあるというところ以外はヴォーカルは存在いたしません。
雰囲気はまんまと言いますか、「不安を孕む宗教色の強い中世ヨーロッパ的サウンドです。
パイプオルガン始め、レリジャスサウンドを紡ぐためにサウンドに色合いを持たせています。
魔女術を扱っているなら当然ですが。

楽曲ごとにサウンドの差異化も図られており、冗長さを楽しむというよりは、タイトルを眺めてイメージングを図りながら聴くと新たな発見が出来るでしょう。
この作品でも十二分に感じることは出来るのですが、ことDrudkhではRoman氏の本当に多彩なメロディメイキング力を感じることが出来ます。
ベースが埋もれがちになるブラックメタルですが、彼は前に出すのが好きでして。"Microcosmos"などのギターリフなどもおぉ、と思わせられます。


いつの間にかDrudkhの話になっちまったな…!!!


才能あるとハゲる法則でもあるのか…?

・Generalization
ま、一言でいえばアンビエントですソリャソウジャァwwwwwww
しかしやはり、彼の紡ぐ音彩は目を見張るものがありますね。
聴き手が短絡的であろうと、「それ」をイメージングさせる程の表現力を有しているので、BGMとして聴き流すことを良しとさせない魅力があると言えますね。

チェックしておきたいのはExperiments In Darknessなどの同系統のアンビエントでしょうか。
無論、本業ではなくサイドプロジェクトなので、Roman氏の真価に触れたい方はHate ForestやDrudkhを聴いてみましょう。
Drudkhは既述の"Microcosmos"とか良いですね。個人的には4thの"Blood In Our Wells"が好きです。

あぁ、リイシュー盤デジパックには"1347"なる楽曲がボーナストラックでついてきます。



(この紹介するプロジェクト間違えた感)

・Notable Songs
―Art Of The Dark Ages
:特筆すべきはチャントと荘厳的なパイプオルガンによる掛け合いですね。曲単位では様相は異なってくるにせよ、曲内ではあまり変化が見られないのも特徴。

―Ignorance
:シンセによるミスティカルなフレーズを反復する楽曲。タイトルは我々への訓戒、なんでしょうね。ロマン溢れるぅwww