Best Albums of 2014: II
こんにちは! 五条です。3月の末ながらまだまだ冷える時分ですがお変わりありませんか? 私は常に上裸で過ごしているのでそろそろ風邪を引きます。
さてさて、今回の記事でようやく2014年度年間ベスト記事が完結。気合いをそこそこ入れての作成となったのでやや疲れ気味。もう身体が羊羹です。
また、前篇を未だご覧になっていない方は、是非そちらの方からご確認を。もう前篇記事で燃え尽きちゃったんですがね...
引き続き、留意事項は以下の通りとなります。
- 対象作品はアーティスト名アルファベット順で列挙しております。その数25+25の計50枚。この記事は後篇のため、25作品のみご紹介です。
- フルレンス、EP、スプリットなど、音源収録形態は問わない発表となります。ごちゃごちゃです。
- 対象音源は2014年1月1日~12月31日にリリースされた作品の内、当方が期間内に入手している音源のみ。当たり前といえば当たり前ですが...
- 原則として既発音源/楽曲の編集盤、および再発盤は対象外です。
- くわえて最後に、ベスト50に選出こそしなかったものの取り上げたかった音源を14枚ほど列挙しております。合わせて一瞥してみてください。
それでは参りましょう。今回は見ていて新鮮さを感じる作品も多いはず。どれも素晴らしい音源です、何か指標として役に立てて頂ければと思います。
26. Linkin Park - "The Hunting Party"
Country Genre Label Type Buy United States Alternative Rock Warner Bros. Full Length Amazon 説明不要なカリスマロックバンドによる6thフル。当方が聴いたのは実に3rdぶり。もうおじさんやで
それ故あまり4~5thの音楽性とは比較できませんが、とてもよくまとまった一枚だったなと。後期の作風を基にしつつも、初期作品にみられたメタリックなギターから成る攻撃性やシノダさんを始めとするラップパフォーマンスも程良く取り入れており、アグレッシヴかつ聴き易いスタイルへ。
しかし。聴いていて爽快になるのは確かですが、何か突っ切っていく感触を覚えない...
チェスターさんのリードヴォーカルがいまいち弱いんですね。今作で音楽性は確かに一つのゴールを捉えたと思いますが、貴方が本領を発揮しないと! ライヴ時に魅せるあのパワフルさ、是非音源でも。久々に聴いて、「やっぱりリンキンかっけぇな」と思わせてくれた作品でした。あとアートワーク、やたら格好良いですよね。
27. Mamiffer - "Statu Nascendi"
Country Genre Label Type Buy United States Heavy Ambient Sige Full Length Amazon 元ISIS(the band)のアーロンさんとその嫁はん、コロッチャさんのプロジェクトによる3rdフル。
歪むギターサウンドが与えるヘヴィネスも有する、広義のアンビエントに該当するスタイルです。ドローンの様相も垣間見える、重く、しかしどこか切ない心地良い残響に身を委ねることができます。
#2は"Enantiodromia"における暖かいオルガンのリフレインも素敵。鳴り響くギターとの相性も抜群。また全編を通して穏やかに注がれるコロッチャさんの美しい歌声はぽたくな我々の†穢れ†を取り除いてくれます。#4の"Flower Of The Field"で謳われたるは天上の調べ。何もかもが浄化されていきます。
宣伝文句でもある「極められた静謐」は伊達ではありません。美しさのみを堪能できる確かな一枚。
...なに? お前これ買ったのにGodflesh新譜スルーしてるだろ? 愚かな、タイミングってもんがあんだよ本当に申し訳ございませんでした。
28. Manes - "Be All End All"
Country Genre Label Type Buy Norway Avantgarde Trip Hop Debemur Morti Full Length Amazon 掛け値なしに素晴らしいリリースの連続だった2014年度のDMP、ラストエントリーはこちら。
ブラックメタルから後に実験的なトリップホップへと移行していったManesさんの7年ぶり4thフル。捉えどころのないサイケデリックなタッチはそのままに、ざらついたメタルエッセンスを極力排除したチル/ムーディな作風へと変貌を遂げています。実態を掴ませないリキッドなエレクトロニクスが眩暈を引き起こすふわりと浮いたヴォーカルと交錯するオリジナリティ、この4thにて完成したのでは。
楽曲によってヴォーカルが異なるのですが、特に#3の"A Safe Place In The Unsafe"や、名曲である#7は"Name The Serpent"で歌い上げるAsgeir氏の立ち回りには舌を巻きます。身体を反らせ飛び跳ねては屈み沈むこの表現力、まさしくManesの追い求める「先」には必須なのだろうなと。
新たな一歩を踏み出し歩み続けるDMPを支え、先陣を切って道を切り開いてくれる決定打的快作。はい、ダイレクトマーケティングです。
29. Marsen Jules - "At GRM"
Country Genre Label Type Buy Germany Drone Ambient Oktaf Mini Album Amazon 精力的なドイツの実験音楽家による最新ミニアルバム。彼自身が運営するOktafからのリリースです。
フランスの有名なスタジオ、GRM(ってどこなのか)で録音されたアブストラクト・ドローンアンビエント。#1の"Part 1"での最下層に敷かれた柔らかなドローンサウンドが上方へと押し上げてくれる光や、
#2での"Part 2"における空間を左右から圧縮することで生じさせた緩やかな揺らめき、その表現力。2曲34分、ただただ紡がれる人肌の残響。つまらぬと捉えるか、寄り添える何かと捉えるかですね。
その音像とともに微動する暖かな呼吸... アンビエントで是非感じ取りたいエッセンスが詰まった1枚。
30. Mokhov - "Future Hope"
Country Genre Label Type Buy United States Electronica Sun Sea Sky Full Length Amazon アメリカのエレクトロニカアーティストによる4thフル。ダウンテンポを主体とした眩光差す作風が特徴。
こちら、最後まで揺るぐことのなかった個人的なフルレンスにおける2014年度ベスト音源となります。どこまでも澄み広がる、だからこそ煌々と浮かび上がる「希望」。先に在るは「闇」、立ち止まれば「苦」、届かぬ「外」、逸らせぬ「内」、追い老わせるは「淵」... そんな負の実態を探求するブゥラッキュ・ムッタラーの視界を切り開いてくれる、本気マジカルスーパーホープのみが溢れる一枚です。
雲のように流れては爽快に駆け跳ねるシンセサイザーのリフレインが奏でる抑揚こそが真髄。
このシンプルな表のサウンドとは裏腹にクールに響くベースのメロディワークも注目したい点。#2の"Echo Love"で一聴き惚れしたのですが、この前半#1~#4の流れが言葉にし難いほどに。
ここまで純粋なテーマを掲げたエレクトロニカと向き合ったことがなかったためか、その衝撃度は凄まじかったですね。本当に最高の一言です。ちなみにMokhovさん、大の日本好きとのことで今年も二度ほど訪れる予定とのこと。昨年も一ヶ月滞在していたりとそのお熱っぷりは確かな模様。
くわえてなんと、Bandcampで購入した人全員にサンクスメッセージを毎度送っているようで... やはり輝人-かがやきんちゅ-か。
31. Nightbringer - "Ego Dominus Tuus"
Country Genre Label Type Buy United States Black Metal Season Of Mist Full Length Amazon 対して深き闇を暴き晒すのはこのアーティスト。アメリカの賢者五人衆が放つ4thフルアルバムです。
前作でもその高きクオリティは示されていましたが、今作の方が軽く上回っていると言えるでしょう。掻き鳴らされる知的なトレモロリフの陰にてこちらを見据えるカルティックなメロディは以前までのそれとは純度が異なっており、よりクリアに谺します。ブラストビートにも違和感なく共鳴。#7は"Where Fire Never Dreamt Of Man"の中盤での音の起伏が生み出す壮大さや、ラストトラックである#10の"The Otherness Of Being"で魅せる漆黒のダイナミズムにはただただ呑まれるしかありません。
サウンドプロダクトも良く、ディティールまで練り上げられております。全篇通して聴くと少々冗長に聴こえるというネックポイントも解消し、更なる高みを手にした確かな一枚であることに疑いはありません。
32. Nils Quak - "Tage Später Sind Es Jahre"
Country Genre Label Type Buy Germany Experimental Ambient independent Full Length Bandcamp 最早何枚目なのかも分からないほど精力的に活動するドイツの実験音楽家による作品。
何かを忘れかけた心若き人々に今一度問いかける、30分弱の楽曲2曲が収録されています。前回紹介したDino氏とのスプリット音源よりもやはり実験的要素が強いのは確かで、ノイズサウンドをベースにしつつ、突如形を変える流形のシンセサイザーの膨張と収縮が繰り返されていることからも、日常に潜むフラストレーションを浮き彫りにさせて表現できていることが窺えます。
ノイズパートと奥に在る手触りの良いドローンパートが向かい合い拮抗している様を描き出した#2の"Tristan Da Cunha"には心打たれるものが。優劣の評価は難しいものの、取り上げたかった一枚です。
33. North Side Drive - "Snow // Sea // Sky"
Country Genre Label Type Buy Ireland Classical Electronica Preserved Sound EP Bandcamp 前篇でも少し触れた、フルレンス外における2014年度ベスト音源タイとも言うべきエレクトロニカ。
クラシカルと銘打つだけあって、メインメロディを奏でるは優しく響く、しかしモダンな解釈をされたピアノ。
降り注ぐ流麗なピアノに煌々と照らす高音のシンセサイザーが交わり、身体にすっと沁み渡ります。#1の"Snow"における繊細さ、故に備わっている美しさ/切なさはまさに表題、雪の如し。
物悲しきメロディより一転、徐々に光を見出す#3の"Sky"も同様に涙ちょちょぎれること間違いなし。涙腺を刺激するクセのない美しいピアノワークが秀逸な、確かに前年度を代表するEP。名盤です!
34. Nova - "Passages"
Country Genre Label Type Buy multinational Experimental Ambient Ultimae Compilation Bandcamp フランスのエレクトロニカを始めとする実験音楽群を取り扱うレーベル発のコンピレーション盤。
現代的なアプローチが施されたエレクトロニカを展開する、レーベル関係アーティストが名を連ねます。Bandcampのタグによる長旅の末発見したレーベル/作品でしたが、これがなかなかどうして素晴らしく。
中でも、丸みを帯びた空間にぽつぽつと薄ら響く信号を発するBlando Lupi、カルチュラルメロディを交えて遠くより声を伝えるMurya、地平線までその夜光を渡らせるMax Millionの放つ楽曲がオススメ。
現実/現代的、しかし幻想的な実験音楽を求める方は是非このレーベルをチェックして頂ければ。
昨年初めて知った身ですが、私に今後のリリース等をしっかり追っていこうと決めさせた1枚です。
35. Panopticon - "Roads To The North"
Country Genre Label Type Buy United States Cascadian Black Metal Bindrune Full Length Amazon 号泣必至の前作にして傑作にしてフライドチキン、"Kentucky"より2年。またまた素敵な作品が此処に。
前作とは異なる方向へと舵を切り、凍える険しい道のりの先を突き進んでいく、フォーキッシュでありながらブラック要素の高いスタイルへと変貌。最初の#1の時点でメタリックなリフやスウィープの熱く泣けるギターソロなんぞも飛び出したりで、追っかけリスナーを驚かせてくれます。
ただし既発作品でも押し出されていたバンジョーメインの土着的なメロディも健在で、より彼の多芸さが垣間見える作品と言えるでしょう。個人的に最も驚かされたのは、#4は"The Long Road Part II: Capricious Miles"中盤におけるシューゲイズリフを後方に配置させ、ベースを際立たせたムーディなブレスパート。続く#5におけるポストブラックに近しい要素の自然な取り込み方にも感嘆を覚えます。
方向性は異なるものの、聴き応えで言えば前作にも勝るかと思わせる彼の底なしの柔軟性、可能性を確信できる逸品であることには違いありません。
36. Protestant - "In Thy Name"
Country Genre Label Type Buy United States Blackened Hardcore Halo Of Flies Full Length LongLegsLongArms 私をネオクラストという浪漫道へと導いた張本人、Halo Of FliesのCory率いる大御所さんの5thフル。
しかし今作にてその路線を大きく変更、巷で流行りのブラッケンドハードコアへとシフトしております。硝煙立ち込める怒りに満ちた灰色のアグレッションのみが抽出されたド直球な8つの楽曲で構成され、粗いサウンドプロダクトが生み出すギターワーク、身体を滾らせるドラミングが激情の下に振り下ろされます。ブラックメタルライクなトレモロやブラストが軸となっているため、ネオクラストの要素はかなり翳っていますね。武器でもあった琴線に触れるブレスパートも意図的か一切導入されていません。
怒りや苦しみ、哀しみによって芽生える反逆の心がすべてを焦土へと還す挑戦作。
ここに来て行われた、今世界を席巻しているスタイルへのシフト、その真意を探っていきたいですね。
37. Rorcal/Process Of Guilt - "s/t"
Country Genre Label Type Buy Switzerland/Portugal Crossovered Black Metal Lost Pilgrim Split Bandcamp '13年に"Világvége"にてその名を轟かせたRorcalさん、今度はポルトガルのPoGさんとの共作です。
楽曲名からも分かる通りRorcalさんは上記作品の延長上とも言える様相を呈した立ち回りで、
スラッジ特有の鉄臭さをそれとなく帯びた、凶暴性の高いブラックメタルを3曲並べております。特に#1である"IX"後半に構える展開がもつ、身の毛がよだつほどの底知れぬ闇の描写は脱帽です。
対して鈍重さを光らせるドゥームドスラッジサウンドから滲み出す負を伝えるのはPoGさん。
歪ませることで不穏さを与えるギター、ミドルテンポでありながらも手数の多いドラムから放たれるグルーヴ感からは「堕ちたNorthless」とも形容できるものを感じます。少々一辺倒過ぎるきらいもありますが。「Rorcalの今を見たい」と手にした今作品でしたが、既に彼らは更なる先を見出している模様。PoGさんも次作に期待がかかるスプリットでした。
38. Sekien - "我が意の夜明け"
Country Genre Label Type Buy Japan Neocrust Imminent Destruction EP Imminent Destruction 日本は姫路発、今話題沸騰中の激熱ネオクラストバンドによるEP。1stプレスは地味にイギリスより。
ジャパニーズアンダーグラウンドサウンドとも言うべき、どこかレトロチックな燻るギターリフ/メロディが振り切った声明、疾走するハードコアベースのリズム陣を引き連れて進むべき道を切り開きます。新鋭バンドであるものの、#1の"踉蹌"を聞けばその確かな構成力、リフワークを感じ取れるはず。
夕暮色を帯びた叙情性が暗に足元を満たし、彼らの叫びから逃すまいと我々を放しません。#4には2013年のデモにも収録されていた"六六六"が一新されて収録されていますが、これが名曲。
ライヴパフォーマンスで映えること間違いなしの楽曲揃いの中でこれが頭一つ飛び出ています。
私もそろそろライヴハウスへと赴き、シンガロングしたいところですね。気分はサンショウウオです。既に国内のディストロではほぼ見かけなくなったほどに人気の今作ですが、現在待望のフルアルバムを制作中とのこと。新たに紡がれる声、期待ですね!
39. Sheol/Fōr - "Tehom/Ginnungagap"
Country Genre Label Type Buy United Kingdom/Sweden Death Metal Iron Bonehead Split Bandcamp あえて隠さず。当ランキングにおける贔屓枠です。まあ一枠だけだからね、許してチョリソーソーセージ。
当方が愛して止まない旧Subvertio Deus/現AntinomianのメンバーによるSheol(正式には"שְׁאוֹל")と、名前すら聞いたことなかったスウェーデンのデスメタルバンドFōrによるスプリット作品です。
現在では全くと言っていいほどデスメタルを聴かなくなったのですが、Sheolとなれば話は別なのです。
そんなSheolさんは、前作EPに比べかなり洗練されたデスメタルを披露してくれます。音造りが粗いにも程があったロウさ加減はなくなり、刻まれるリフやドラムの輪郭をしっかり聞き取れるように。
前作中に見られた、もたついたドラミングなどを聴きつつ「ああ、楽しそうに別プロジェクトやってるな^〜」なんて顔を綻ばせていたらこのザマです。そんなしっかり練られた7分強のデスメタル楽曲を作るようになったのね... ママ悲しい。という感じに、もうこっちのプロジェクトにノリノリかつ本腰を入れた模様。号泣です。
私が大好きなヴォーカリストであるMalaghôd氏も、こちらのプロジェクトではショッカーヴォイスを封印しているようで残念ここに極まれり。最初は「Sheolがストレス消化用くらいであったらどんどんやって欲しいな」って感じだったのですが、「Sheolとしての活動がまぢ最高なので、現時点ではAntinomianとして新作を繰り出す可能性は低いよ」とのこと。全て本人談です。ここに2nd待ってる人間がいるよ!? 聞いてる!? 保存用と観賞用で5枚買うよ!?
...まあ、ファンとしてはもうお好きなだけやってくださればという感じです(なんだかんだでSheol音源コンプリート収集中)。
対するFōrさんの方は、地を這い血肉を自ら削ぎ落とすおどろおどろしさ満点のデスメタル。 ...感想それだけって? 当然だろうがSheolが目当てなんだよ!
40. Siavash Amini - "What Wind Whispered To The Trees"
Country Genre Label Type Buy Iran Experimental Ambient Future Sequence Full Length Bandcamp イランの実験音楽家による作品。内省的なヒーリングドローンを取り扱うFuture Sequence発です。
篝火の如き儚さを漂わせるダークアンビエンスに一筋の煌めくストリングスの旋律を瞬かせる手法こそが今作の軸。多くの場合、メインを目立たせるあまりにアンビエントパートの意味を失わせてしまうのですが、Siavash氏は双方の位置調整を絶妙にこなしています。自身のスタイルを見極め、朗らかに「外」へと響くものではない、「内」へと作用したメインメロディを置いているのが全ての鍵と言えるでしょう。
#1は"The Wind"におけるストリングスの導入点には唸ってしまいますね。聖さすら覗くものが。
くわえて留まらず、ノイズも加味したアンビエントパートのみで構成された#6も素晴らしく。初聴時には思わず声も上げた、非の打ちどころがまるで皆無なエクセレント音源。神々しき自然囁く音色を堪能してみては如何でしょうか。
41. Sólstafir - "Ótta"
Country Genre Label Type Buy Iceland Psychedelic/Aboriginal Post Rock Season Of Mist Full Length Amazon 2011年度屈指の傑作、"Svartir Sandar"より早3年。待望の5thをドロップしたのはこのバンドです。
寒き大地における24時間を8等分した各時間帯の名称を掲げる楽曲陣が織り成す薫りはやはり格別。前作と比べても、優しいリヴァーブサウンドが目に見えて多用され、アトマスフェリック要素がさながら瀑布を思わせるほどに垂れ流し状態。故にピアノを始めとする楽器との親和性も向上しております。
そうは言っても#6は"Nón"の後半などに見られるグルーヴのあるカントリーロック調には異郷への愁い、想いを禁じ得ません。"Svartir Sandar"と比較するのは酷なのかもしれませんが、しかしそれより聴き易いのは確か。彼らが有する魅力の本質も充分感じ取れる一枚ですね。
42. Sukekiyo - "Immortalis"
Country Genre Label Type Buy Japan Alternative Rock Fire Wall DIvision Full Length Amazon ほいで「おい... これDirの新譜大丈夫か...?(4月当時)」なんて声が飛び交ったほどの作品がこちら、
我らがデルリアンポポリロリレイのフロントマン、京氏が所属するバンドの1st。バンド名は直に慣れます。青白く透る艶めかしさとしなやかさ、時代を選ばない「和」のテイストが盛り込まれているのがポイント。
Dirでは出せない、出す必要のない淡い色彩と繊細な音が、しかしバンドサウンドとして表出しています。その入り組んだ緻密さから、逆に#5である"Zephyr"が若干浮いているように感じるまであります。何度も何度もその世界観に浸ることを前提とする、有り体にいうところのスルメ盤にあたりますね。
本当に佳曲揃いの中、特に#14の"鵠"は別格。ジャパニーズポストロックに求めたものが此処に。
強いて挙げる指摘といえば、少々その美しさが過ぎる点でしょうか。ただ、これもまた今年にリリースされたミニアルバムにて解消済み。いやはや...
「京のソロプロジェクト」なんて軽いものではない、魅力満載の一枚。それ故にDisc 2を聴く気になれないのは当方だけではないはず。acid androidのは聴いたで
43. Súl Ad Astral - "Afterglow"
Country Genre Label Type Buy multinational Neo Black Metal independent Full Length Bandcamp 当方激推し、新鋭ポストブラック/ブラックゲイズバンドによる2ndフル。NZとアメリカが拠点のようです。
前作にて「飽和したブラックゲイズ界の光」としての片鱗を見せつけてくれた彼らですが、それから約1年、何をどうしたらここまでの進化を辿れるのかと不思議でならず。それほど研磨された作品です。このバンドの肝はやはりパワフルなヴォーカル。ブラックゲイズともなれば遠くより霞み響くハーシュヴォイスなどが通例となっていますが、Michaelさんはその類ではなく。1stを超えたそのクリーン/グロウルパフォーマンスは、彼らの音楽性をしっかりとリードしていくに相応しいものとなりましたね。
今作は少々ハードメタリックな要素が多いものの、こちらを捉えて離さない楽曲が目白押し。作曲センスも到底若手だとは思えぬものがあり、楽曲はほぼ全てシームレスで紡がれております。中でも柔と剛、その転調を見据えた攻撃的/流麗なメロディの使い分けが如実に見られる#3"Immanence"後半~#4"Eigengrau"の流れは素晴らしいの一言。
なよっちぃ飽和したこのシーンを切り裂く、説得力バリバリの名盤。あえて言いたい、君たちはネオブラックメタルであると!
44. Teitanblood - "Death"
Country Genre Label Type Buy Spain Blackened Death Metal Norma Evangelium Diaboli Full Length Amazon
で す
45. Tobias Hellkvist - "Cay"
Country Genre Label Type Buy Sweden Ambient Dronarivm EP Bandcamp 北海道の小さなレーベルであるSmall Fragmentsよりリリースされた"Turquoise"も記憶に新しい、
スウェーデンの実験音楽家によるEP。全1曲18分という構成ながら、溢れる生命力が体感できます。大地の呼吸を思わせるノイズの入った環境音を丸みを帯びた殻とし、その上で徐々に羽を広げていく高音シンセサイザーによる脈をもつアンビエンスの胎動表現が秀逸。じっくりと後方に位置する他の実験音まで拾えることができたなら、その音彩がもつ予想以上の豊かさに気付かされるはず。
何かが生きるということは。このような難しいテーマも、Tobias氏に掛れば描き出せるのでしょう。
心に響く、計り知れぬスケール感をもった作品。
アートワークもすこぶる素敵ですよね、フィジカルで欲しいところですが気付いたときにはもう...
46. Toucan - "De Nuit"
Country Genre Label Type Buy France Retro Math Rock BLWBCK Full Length Bandcamp 一昔前。変わらぬ町並みを車で駆けていくあの頃を想い匂わすアンティマスロックを披露するのは、
オシャなフランス発のToucanさんです。今ではMusicFearSatanさんからもリリースされてます。軽快に動き回る単音/トレモロメロディを基軸に、レトロビープ/リヴァーブやエコーのかかったエッセンスを混ぜ合わせた、楽しげでしかしどこかアダルトなサウンドスタイル。ヴォルテージが一段一段積み上げられていく様には思わず笑みが零れることでしょう。私より一回りほど上の方にはバカウケなはず。
#1の"Autopista"は言わずもがな、#3などのトランペットが実に憎い。もうビバリーヒルズです。
煌めく夜のネオン街だけでなく、潮薫る昼間の海沿いのドライブにもピッタリな、
聴く時間帯を選ばないフランスらしさ全開のオシャレな一枚。...でもビバリーヒルズです(?)
マスロック好きな方、何より煙草の似合う渋いそこのダンディな貴方にオススメ! きっと舘ひ○しさんも聴いてるぞ!舘さんは約3.5回り上ですね...
47. Trap Them - "Blissfucker"
Country Genre Label Type Buy United States Violent Hardcore Prosthetic Full Length Amazon 各方面にやたらと詳しいとある音楽好きな方曰く、"Deathwish界の大正義"。そんな彼らの4thです。
まあただ、リリース元は異なります。普段あまり聞かない音楽領域ながら、かなり惚れた一枚。アートワークでは人をラップフィルムか何かで窒息させている図が描かれていますが、内容としてはどちらかというと鈍器で執拗に殴りかかっているイメージを受けます。結局は凶悪至極。しかも生半可な鈍器ではありません、SIREN(無印)で猛威を奮った、かのネイルハンマーレベルです。宮田○郎さんも下手したらネイルハンマーではなくこの作品のプラケースの角で屍人を殴打していたかもしれません。
むしろ、私自身が可愛い女子高生にネイルハンマーで殴打されたいと。聴いていてそう思います。
2ndなどに比べかなりヴァイオレンスな作風にシフトしている節もあるため、今作はむしろミドルテンポ・ヘヴィネスに魅力があると言えるのではないでしょうか。その魅力も詰まった、緩急ある#10は"Ransom Risen"、これがめちゃくちゃ格好良い楽曲。一様でない怒りがひしひしと感じられます。
「女子高生に責められながら聴きたい一枚ランキング」における堂々の一位。ただ私は年上派なのでそこのところは本当によろしくお願いします。
48. Vampillia - "The Divine Move"
Country Genre Label Type Buy Japan Brutal Orchestra Virgin Babylon Compilation Amazon 大阪発、何とも形容し難い激烈音楽集団による企画盤。国内はツジコノリコ、BiS、あぶらだこのヴォーカル、国外では当方の愛するギタリストの一人、Mick Barrなどとコラボしております。
当方はいわずもがなMickとのコラボ楽曲、洪水の如き彼のトレモロとヴァイオリンとピアノパートによる静/動の応酬が楽しめる#5の"Good Religion"のために買ったようなものなのですが、他の楽曲も素晴らしいこと! 特にツジコノリコ氏との”The Dizziness Of The Sun”は胸を震わす名曲と言えるでしょう。「広がり」をキーワードにした、荘厳かつ優しさ溢れる世界が広がります。
様々なアーティストとの、それぞれの激しき化学反応。新鮮さを失わない、稀にみる好盤です。
実際、これが聴き応えあり過ぎてほぼ同時発売のフルレンスを買う気すら起きませんでした。いや買えよって話なんですけどね.....
49. Whisper Room - "The Cruelest Month"
Country Genre Label Type Buy Canada Kraut Rock/Space Electronica Consouling Sounds Full Length Amazon ドイツ発祥の地味かつ実験的なロック、それこそがクラウトロックなるジャンルを指し示します。
アンビエントに傾きながらも、その系譜をしっかり受け継いでいるのがこのWhisper Roomの2nd。私が入手した2014年度作品の中で最も内省的であり、故にサイケデリックな帳さえ羽織っています。
浅い浮遊感を与えつつ空間自体を揺らし変形させるシンセサイザーと背を冷たく撫でるリズム陣が延々と響き渡り、やがて収縮し収束していきます。前作の1st時に比べて尖った実験的な表現は消えておりますが、その分輪に掛けたアンビエンスをリスナーに届けるスタイルへと変化しています。
我々に訴えるべきことを、白々しさを楚々と放つ夜明けを沁み込ませてくれる一枚。まったくConsouling Soundsには頭が上がりません。
50. Wil Bolton - "Bokeh"
Country Genre Label Type Buy United Kingdom Experimental Ambient Home Normal Full Length Bandcamp 図らずも最後の作品となるのはHome Normal印、イギリスの実験音楽家による7th。
タイトルは撮影技法の一つである"ボケ味(意図的に一部をぼかすあれです)"より。下層に音核を敷き、その上へと断続的に実験音を弾けさせる手法は南欧のクセのものですが、しっかりと柔和なニュアンスとなるようにアレンジされたサウンドのタッチからは、やはり日本らしさを感じ取ることができるでしょう。際立った展開も存在しないため、狭義のアンビエントにはかなり近いと言えます。
その中で、どれだけ違和感のないように電子音とノイズ、そしてヴォイスサンプリングを挟んでいけるのか、まさに彼はそれを今作で「実験」しております。そういう意味合いではHN作品としてはかなり異質。
無機質無色、一音一去。思うところも雨の中に消えゆくこの感覚。「人工的環境音楽とは何か」というところに立ち返らせてくれる、深みのある作品です。
余談ながら、Home Normal本部は今春には日本から引き払い、UKへとお引っ越しする模様で。
悲しいところではありますが運営はもちろんこれからも行っていくそうですので、いち会員としてもまだまだサポートしていきたいところですね!
次点14作品
1. Alaskan - "Despair, Erosion, Loss"
2. Alcest - "Shelter"3. Apalusa - "Ghost Notes"
4. Direwolves - "Ægri Somnia"
5. The Donor - "Agony"
6. Free Throw - "Lavender Town"
7. Godflesh - "Decline & Fall"
8. Islands Of Light - "Ruebke"
9. Lebensnacht - "Uudelleensyntynyt Ikuiseen Pimeyteen"
10. N.K.V.D. - "Hakmarrja"
11. René Margraff - "Phasen"
12. Sleepmakeswaves - "Love Of Cartography"
13. Yvonxhe - "Multicolored Libricide"
14. Wolves In The Throne Room - "Celestite"
絶対に
もう年間ベストなんてしません。疲れました。「意地でもやらなきゃ... でも面倒くせぇな」って思っていたらもう4月ですよ? 怖いにも程があります。
まあ、そう言って来年末も「年間ベストが〜」とか言っていると思います。頻度はアレですが、基本ブ畜なので使命感は強いんです。
教訓としては、一枚の紹介につきこの文量はよくないと言うことですね。重複した表現なんて、じっくり見ていればいくらでも出てきそうです。
そんなことをする方がいないことを切に祈りまして。 ...いやそれはそれで嬉しいことなのではないだろうかないかないなありませんやめてください。ともあれ、これでようやく私の2014年が終わりました。これからは通常運行に戻ります、また下らない記事とか書いていきたいですね。
アホなことをメインに、しかし時折かっこつけた記事を書いていく。五条隆志とはそう在るべきなのだと、五条隆志が教えてくれました。それではこの辺で。暇潰しになれば良し、朝のコーヒーのお供にでもして頂ければこの上ありません。これからも当ブログをよろしくお願いいたします!